（その６）番外編１
 
今回は番外編です。
前回の"その３"で「夜間飛行」、"その４"で「写真偵察」のお話をしました。
この２つのキーワードからすぐに思い浮かぶのは、そうです、空をこよなく愛したフラン
スの作家「アントワーヌ・ド・サン・テグジュベリ」（愛称：サン・テクス）です。
日本では「星の王子さま」の作者として有名ですね。
サン・テクスは１９００年フランスのリヨンに生まれ、わずか７歳にして小説を書き始めた
という事です。
始めて空を飛んだのは１２歳の時、以来空に魅せられ２６歳でラテコエール航空会社に
飛行士として雇われ航空郵便路線の開拓事業を行います。
この時の経験から有名な小説「南方郵便機」「夜間飛行」を著しました。
１９３９年第２次大戦が勃発するや、祖国の危機とばかり戦闘機パイロットを志願するの
ですが、すでに３９歳では無理、偵察飛行隊に配属されます。
この時の経験が小説「戦う操縦士」です。
しかし、戦い利あらず、フランスは敗れて、失意のサン・テクスはアメリカに亡命します。
ニューヨークでは日本でも有名な｢星の王子さま｣を著し、有名作家として上流社会生活を
送るのですが、大空への思い絶ちがたく戦線復帰活動を始めます。
１９４３年、名士としてのコネが効いて４３歳にして自由フランス空軍偵察飛行隊への復帰
が許されます。
翌１９４４年には地中海コルシカ島に基地を置く２／３３偵察大隊で、祖国フランスへの写真
偵察任務に就きます。
乗機は双発の高速戦闘機Ｐ−３８の武装を外して航空写真機を装備したＦ５Ｂ、武装は無
くとも、その高空高速性能でドイツ戦闘機に見つかっても逃げ切れます。
同年７月３１日サン・テクスは故郷のリヨンに向けて写真偵察飛行に出撃しました。
そして、飛行可能時間を過ぎても彼は帰らなかったのです。
戦後、多くのファンがサン・テクスの消息を求めましたが、長年それは謎のままでした。
しかし、戦後３５年ほど経ってドイツ軍の記録が見つかりました。
それによれば、同７月３１日、フランス・オランジュの基地から２機のドイツ戦闘機が試験飛行
に飛び立ちました。
２機が試験を終えて基地に帰ろうとした時、突然Ｐ−３８が上空から急降下してきたのです。
時間からしてサン・テクスの乗機と思われます。
武装の無い写真偵察機ですから、ドイツ機を攻撃したのではないでしょう。
なにか事故があったのでしょうか、それとも悪戯っ気を出してドイツ戦闘機の鼻っ面を掠めて
やろうとしたのでしょうか。
しかし、相手が悪かった、２機のドイツ機はフォッケウルフ Ｆｗ−１９０Ｄ型、通称「長ッ鼻の
ドーラ｣と呼ばれる最新型の高速戦闘機だったのです。
2機はたちまちのうちにサン・テクスに追いつくと機関砲を発射、Ｐ−３８は白煙を吹いて
地中海に墜落していきました。
この記録から墜落場所と思しき地中海の海底調査が始まりました。
１９９２年には、ツーロン沖でサン・テクスの乗機が見つかり、遺族が引き上げに反対し
ているとのニュースが流れましたが、誤報でした。
１９９８年９月には、南フランス沖で漁師の網に銀のブレスレットと飛行機の機
体の破片が掛かり、それにはサン・テグジュベリと妻のコンスエロ、そして星の王子さま
の編集者の名前が刻まれていたとのことです。
早速サルベージ会社が付近の海底の捜索を始めたそうです。
うーん、海底の操縦席で人知れず眠っている方がサン・テクスらしいなと思うのですが・・・
追記１：
サン・テグジュベリがいかにフランス国民に人気があるかはかっての５０フラン紙幣
を見れば分かります。（右写真参照）
彼は紙幣の肖像画になっているんですね、「南方郵便機」のラテコエール郵便機
も、もちろん「星の王子様」も出ています。
追記２：
１９９９年６月２９日箱根に「サン・テグジュベリ：星の王子さまミュージアム」
がオープンしました。
早速見学に行ってみました。 感想は？ うーん・・・
追記３：
サン・テクスは米国のドーリットル中将と親交があり、彼が米国に亡命した時に
中将率いる東京空襲に参加を申し出ますが、彼の英語力のため没となりました。
もし彼が東京空襲に参加していたら、「星の王子さま」の人気は今ほど有ったで
しょうか？
追記４：
これを読んだ読者の方は、ガールフレンドへのフランス土産はゲランの香水「夜
間飛行」(Vol de Nuit) に決まりですね。
これはサン・テクスの小説｢夜間飛行｣から命名したとの事。
上品な香りと、上記の「蘊蓄（うんちく）」はかなり効果があると思います。
追記５：
ご存じとは思いますが、女性に香水を贈る時のご注意。
香水は肌に直に付ける物で、欧米では下着と同じように考えられています。
ですから、女性に香水を贈るというのは、かぐわしい肌の香りを嗅ぎたいという
事で、えーと、その、まあ、そうゆう関係にある時か、そうゆう関係を持ちたい
という時なのだそうです。
出張土産に香水を女子社員に配るのは「セクハラ」になるんですかね？
追記６：
もうおしまい
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